<社説>障がい者雇用「代行」 共生社会の実現に努めよ
2023年1月12日 05:00
社説

 真の共生社会の構築につながるのだろうか。障がい者雇用の内実を見極める必要がある。

 法律で義務付けられた障がい者雇用を巡り、企業に貸農園などの働く場を提供し、就労を希望する障がい者も紹介して雇用を事実上代行するビジネスが急増している。 厚生労働省などの調査によると昨年11月末現在で首都圏や愛知県、大阪府、九州を中心に85カ所の農園がある。利用する企業は約800社、働く人は約5千人に上る。
 企業にとっては、障がい者の法定雇用率を満たす手段として活用できる利点があろう。働く側も十数万円の月給が得られ、金銭面でメリットがある。しかし、この代行ビジネスは必ずしもいいことずくめとは言い切れない。
 利用する大半の企業の本業は農業とは無関係で、障がい者を雇うために農作物栽培を始めた。作物は販売せず、社員に無料で配布するケースが多い。違法ではないが「障がい者の法定雇用率を満たすためで、本当の意味での雇用、労働とは言えない」という指摘もある。厚労省は3月までに対応策を打ち出す方針だ。
 私たちはなぜ共生社会の構築を目指すのか、改めて考えなければならない。
 障がい者雇用は、障害者雇用促進法で一定規模の企業に雇用率が義務付けられている。企業は障がい者が能力や適性を発揮し、生きがいを持って働けるような職場づくりに努めなければならない。その意義は障がい者支援にとどまるものではない。
 障がいを含むさまざまな個性を持つ者が互いを尊重し、特性を生かしながら働くことができる社会こそ真の豊かさを保障する。その理想に近づくには課題もあり、試行錯誤が繰り返されよう。しかし、それを避けては共生社会の実現はままならない。
 障がい者雇用に詳しい慶応大の中島隆信教授は「多様な人が働けるよう配慮することは、企業の成長につながる。
企業は『障がい者雇用はコストではなく成長への投資』と意識を変える必要がある」と語っている。
 単に法律に定められた雇用率を達成すればよいのではない。障がい者は働く喜びを実感しているか。企業は共生社会の意義を認識し、実践しているか。
SDGsでうたう持続可能な社会の実現につながるのか。
代行ビジネスについても、これらの側面から評価しなければならない。
 沖縄労働局が昨年12月に発表した、2022年の県内の障がい者雇用状況によると、民間企業(43・5人以上規模)の障がい者実雇用率は2・97%と過去最高を更新した。18年以来2度目の全国1位である。
それ自体は高く評価できよう。しかし、喜んでばかりではいけない。この数値が豊かな共生社会を反映したものなのか、不断の検証と実践が求められる。
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 上記は琉球新報が出した社説です。
上記の社説はその数日前に共同通信が報道したエスプール(子会社)等が運営する、障害者向け農園の代行運営ビジネスに対して厚生労働省が問題視している、という記事に対して出されたものです。
この共同通信の記事の後、エスプールの株価はストップ安となり、4日後にエスプールが反論を行って急反発するという事態が起こっています。
 そもそも障害者関連のビジネス自体が「障害者を食い物にしている」と言われがちであり、株式会社が利益を出すことは悪である、という評価もされがちです。
一方で、こういったビジネス(他には、障害者専門の人材紹介会社等)が障害者自身に利益をもたらしているのも事実です。

 ここで考えるべきは、なぜこういったビジネスにニーズがあるかです。
現状の日本でいえばその理由は、法定雇用率という法律があるから、ですが、ではなぜそういった法律があるかといえば、障害者が働けるようにするため、ということになります。
ではその法律の中に、「働きがいがある職場で働けるようにする」「スキルを身に着けられる職場で働けるようにする」といった文言があるか、といえばないはずです。
障害者であるかどうかにかかわらず、働く場において働き甲斐があるか、スキルを身に着けられるか、は企業側が人を集めるのに必要なため自ら努力すべきことであり、そこで集めたい人材とは企業に利益をもたらせる人材のはずです。
そういった人材は、障害者であるないにかかわらず、必ずしも多くはありません。それゆえ、企業は職場環境を改善する努力を行います。
 今回問題点を指摘されている代行運営事業はこの観点でどういった評価ができるでしょうか。
実際に作った作物がマーケットで評価されている、他の会社でも活用できるようなスキルを実際に使って仕事をしている、ということがなければ、企業が自らの環境を改善する、というモチベーションを恐らく下げてしまうという結果になるのではないかと思われます。
なぜなら、自らが環境(この場合は「障害者にとって」の良い職場環境)を改善しなくても代行会社がやってくれるから、です。
一方で、こういった代行会社間では競争が起きて、その代行会社の中での職場環境の改善が行われる可能性があります。
記事にあるようにすでに80か所以上の農園があり、実際にそういった傾向は見られてきています。
またさらに農園数は増えていくのは間違いさそうです。
従って、長期的には良い方向になっていく可能性がありますが、それはそれでよいのでしょうか。

あくまで「障害者にとって」良い職場環境を「専門の代行会社」が作っていくということが肥大化していく、という結果をもたらす可能性が出てくることが、次の課題となりそうです。
なぜなら、ある程度の配慮があれば普通の職場環境で働ける障害者が排除されるという事態が想定されるからです。
ではどうすれば良いでしょうか。
 最適解がすぐにあるわけではありませんが落としどころとしては、障害者雇用についても一般社員と同様の仕事を同じ職場環境で行ってもらうのをメインとし、それが難しい障害者について「代行会社」で雇用するというハイブリッド型が現実的な気がします。
その比率については政治がコントロールせざるを得ず、そこには利権が絡みますが、「障害者団体と世論」に対する企業という構図が発生しても企業がそこまで強気には出れないテーマなので、良いバランスになるのではないかと期待できます。
また「ある程度の配慮」がリモートワーク等の制度の常態化によって実現されやすくなる、一般社員の理解も得られやすくなる、という傾向は良い材料です。

 さらに長期的に見た場合は、やはりテクノロジーの発展が期待できそうです。
そもそも障害者であるなしに関わらず、手足が動かなかろうが、目や耳が使えなかろうが、仕事ができる環境がテクノロジーによって構築されていく可能性は十分にあるでしょう。
では本質的な問題は何かと言えば、手足や聴覚、視覚が使えても企業の利益をもたらせない人たちをどうするか、です。
そして、このテーマは障害があるなしには関係がないのではないか、という恐怖感にも駆られていきます。
障害者とは何なのか?、が近未来のテーマです。
AIがロボットを使ってすべてを代行してくれる世の中になれば、人がやることはありません。
必要なのはAIをプログラムできる、せいぜい人口の0.01%程度でしょうか。
最終的にはジブリが描いた天空の城の世界を夢想させます。
50年後にはそうなるのでしょうか。。。。(AIがAIをプログラムできるようになれば、ターミネーターの世界です)